はじまり

何年前だったか


ダウンタウンのごっつええ感じの中古CDをなんとなく買った。

「えっ今月まだ、20日もあるの?」

小学生だった当時は理解できなかったこのフレーズで大笑いした事があった。



「覚えたり教えられたり 勉強したりするんじゃなくて
ある日突然ピンと来て だんだん分かる事がある」






音楽と距離を置いてしばらく経っていた。

音楽から、今まで聞いたことの無い言葉やユーモアを得られないと、新譜を買う事も無くなっていた。
ある時思い立って、ポータブルCDプレイヤーへのこだわりを捨て、以前使っていたスマートフォンをmp3プレイヤー代わりに使うことにした。持っているCDをほとんど全て入れて、通勤でイヤホンを耳に差し込む。

数日で、聴きたい曲がないと気が付いた。
僕にはもう、音楽が必要ないんだと思った。

それからは2年程、ラジオを聞いて通勤した。

AIRJAMの末期に興味を持ち、Hi-STANDARDがいなければこんなにCDを収拾する人間にはなっていなかったと言える程、僕にとって大きなバンドであるのだが、活動再開を是非観たいとは思わなかった。期待は裏切られると分かっていたからだ。
対バンの、休止中も動き続けていたバンドに敵うわけがない。

新譜が出ると聞いたときもそうだった。
求めているような、当時のような曲は恐らく聴けない、各々の活動の軌跡が見える新譜になるであろうと予測できた。

なにより僕には、もう音楽は必要ない。


それでも一応と、動画サイトでPVを観てみる事にしたが、PVよりも関連動画に興味を引かれ、気が付けば長時間動画を掘り返していた。
昔よく聴いていた曲を観て、そのバンドの新曲を観ると繰り返している内、関連動画にWiennersが出てきた。



SCHOOL YOUTHを初めて観た時。

スタイルは当時流行っていたSCHOOL JACKETSやFRUITYフォロワーに聴こえたが、聴けば聴くほど、1曲1曲にあらゆる音楽が溶け込んでいると感じた。恐ろしく膨大な音楽を聴き込んでいる人間の作った曲で、僕なんかには計り知れない奥行きがあると思った。
ピコピコ系等と言われるような、機械音の入ったダンスミュージックをバンドスタイルで表現しようとしていると、その挑戦をこれからも楽しみたいと思った。

しかし数年後、SCHOOL YOUTHは解散、キーボードを入れてWiennersを結成する事になった。

機械音を入れたら、もう普通だろと。
そんなバンドならいくらでもいるだろと。

彼らはもう、僕が興味のある彼らでは無くなってしまった。

そのWiennersは今、メジャーデビューの後に独立を果たし、地上波ではないがドラマのタイアップ曲が収録された、結成10周年のアルバムを出すらしかった。


バンドを続けるのは難しい。
解散、休止、メンバーチェンジ。円満にキャリアを重ねているバンドの方が少ないのではないかと思う。
そのなかで、パートタイムからフルタイムへのミュージシャンへと歩み続けている事自体、誰にでもできる事ではない。

今思い返せば当時の僕は、SCHOOL YOUTHの解散を、Winnersへの変化を、受け入れられなかったのかも知れない。
いや、それよりも程度の低い、WiennersよりSCHOOL YOUTHの方が良かったと言うことで通ぶっていたのかも知れない。


聴いてみたい。
あれから10年、今彼らがどんな曲を作るのか。

今なら。
あの頃分からなかった事が分かるかも知れない。


後日数年振りに新譜を購入するところから、このブログを始めようと思います。